浅葱色が愛した嘘
桔梗の中に流れる血____。
それはかつてこの世を支配したと云われ、恐れられてきた(妖狐)の血だった。
人間に化け、人を騙し、
時折、人々を食していたと人々から恐れられてきた。
澄朔はいざという時のために、桔梗に剣術を教え、妖としての力を付けさせた。
森の動物を使い、狩の練習、
時には町へ行く事を命じ、人さえも殺させた。
普段、桔梗の目は深い群青色。
しかし、狩をする時のその瞳は
まるで血に染まったかのような赤い色になる。
幼かった桔梗は、小さな体で戦場を駆け回り、
返り血を頭からかぶる事が多かった。
『すーさーぁ。
お腹空いたー!』
まだ日も上がってまもない頃、
寝床から起きてきた雛野は眠たそうに目をこすりながら、起きてきた。
『起きるの早かったね。
少し待ってなさい。
桔梗___。
君は町へ行って狩をしておいで。』
まだ五歳の雛野は桔梗が人間ではない事をあまりよく理解していない。
澄朔は桔梗にそう告げた後、
台所の方へとゆっくり向かっていった。