浅葱色が愛した嘘
桔梗はその場に静かに立ち上がった。
そして何も言わずに背を向ける。
そのまま新撰組を出て行くと悟った土方は桔梗を呼び止めた。
『待て、桔梗。
何か勘違いしてねぇか?
俺らはな、お前が人間だろうが妖狐だろうが、そんなの知ったこっちゃねぇよ。
俺たちはただ本当の事が知りたかっただけだ。
お前が総司を置いてここを出て行く事は副長である俺が許さない。
いいか?
明日から通常通り隊務を行え。
これは副長命令だ。』
想像していたのと違った、
てっきり、この場で斬り殺されるか、追い出されるかのどちらかだと思っていた。
化け物である私を
最も貴方たちが大切にしているこの新撰組に置いてくれるのいうのか?
『いいのか?ここに居ても。』
『何度も言わせんな。
俺はここにいる間のお前を見てきた。
態度はでけぇーし、生意気で泣き虫なただの女だ。
人間の俺たちと何も変わらねぇよ。
そうだろ?みんな。』
土方の問いかけに、その場にいた全員が微笑み、頷いた。
『澄朔。いや、桔梗。
これからも新撰組のために頼んだよ。』
______近藤さん。
『貴女は今も変わらず私たちの仲間です。』
______山南さん。
『せやで!
桔梗は新撰組に必要な存在や!』
________山崎さん。
『全く、とんでもない女だ。
だが、俺もお前を認めているから。』
______斎藤さん。
みんな、桔梗を認めてくれていた。
真実を知ってもなお、
温かい眼差しを桔梗に向けていた。
軽蔑する事もなく、
恐れるわけでもなく、
新撰組の一人の隊士として
また新たに迎え入れてくれた。