浅葱色が愛した嘘
その目は、その血のような赤い目は、妖狐が狩りを行う際、
妖力を解放をした時に染まる色。
それは桔梗と同じ目だった。
『……どうして?』
澄朔は人間のはずだ。
なのになぜ、今になって妖気が感じられる?
『簡単な事だよ、桔梗…
俺も妖狐だ。』
……!?!?!?
同じ、妖。
自分以外は滅びたと聞かされていた。
『なぜ、黙っていた?』
『なんとなく。
驚かせるため?』
違う。きっとそんなんじゃない。
でも、この状況でまともな返答が返ってこないのも目に見えていた。
『人を傷つけたくない。
人を殺したくない。
大層、立派な考えだ。
たが、戦場にはそんなもの通用なんかしない。
戦場では迷ったものから死んでいく。生き残るのは何にも囚われず躊躇する事なく人を殺せる奴だけ。
それが戦場の正義だ!
俺が沖田とやらを斬った。
俺がお前の愛おしい奴を殺そうとした。
さぁ、こい!!!
妖の力を解き放て!』
澄朔の言葉…それを聞いた瞬間、桔梗は拍車がかかったように妖力を解放した。
強い風が吹き荒れ、桜の花びらが派手に舞う。
『そうだ…それでいい。』
澄朔は笑った。
『あれが…桔梗?』
すぐ近くまで来ていた沖田は呟いた。
今まで優しい表情を見せていた桔梗の面影はどこにもない。
ギラギラと血塗られたような瞳。
その目は憎しみで満ち溢れていた。
キンッキンッガッ_________
凄まじい勢いで重なる刃。
刃先の交わる音で耳がどうにかなりそうだった。
人間にはまるで見える事の出来ない早さ。
土方も息を飲んだ。
これがあいつの本気って奴か。
冗談じゃねぇ。
こんなの強すぎんだろ。
しかし、
『ぐはッ………
ちっ、』
力には差が生じていた。