浅葱色が愛した嘘
『なんで…!どうして…
澄朔……
私を殺すつもりだったんじゃないのか!!』
桔梗の手はカタカタと震えていた。
いくら裏切り者だとはいえ、
幼い頃、自分を育ててくれた家族のような存在。
本当は生きていただけでも嬉しかった。
本当はまた会えて嬉しかった。
願わくば、昔の頃のように笑かけてほしかった。
次第に澄朔は力なくその場に倒れる。
『……澄朔!!!』
気づいた時には桔梗はとっさに澄朔を抱きかかえていた。
『……げほげほッ
ったく…俺の事なんかほっとけばいいのに。』
口から血を流し、刀を突き刺した傷口からは血がドクドクと溢れ出る。
その傷口に手をかざしても、血は全く止まらない。
澄朔は妖力を抑え込み、尾や牙は消えていた。
いつしか、殺気さえも感じられなかった。
桔梗も同じように、妖力を封じる。
『答えろ、澄朔!
なぜ刀を直前で手放したんだ!』
心の中で渦を巻く感情はやがて涙へと変わり澄朔の頬に一滴ずつ落ちてゆく。
『はっ、俺がお前を本気で殺すとでも思ったのか?
笑わせるな。
俺とお前は唯一の生き残りだ。
殺したりするかよ。
それにな?桔梗……
お前は俺の血の繋がったたった一人の妹だ。』