浅葱色が愛した嘘
『澄朔!澄朔!
しっかりしろ!死ぬな!』
桔梗だって愛していた。
自分を犠牲にしてまで、澄朔は桔梗に力を与え、この日のためだけに、ずっと死を演じ続けてきた。
『俺は桔梗の中で生き続ける。
だから、なにも心配しなくていい。
綺麗になったな。桔梗……
幸せになれ。』
澄朔は最期に笑顔を向けた。
桔梗が大好きだったあの温かな笑顔。
やがては瞳を閉じ、その体は動かなくなる。
しかし、その眠ったような顔はどこか微笑んでいた。
千年桜の花びらはまるで二人の別れを惜しむかのように可憐に舞う。
悲痛な運命(さだめ)さえも、今の世界では受け入れなければ生きていくことさえも難しい。
やっと手に入れた幸せは
他の誰かの手によって簡単に壊され
憎しみと悲しみの渦に誰もが飲み込まれる。
出口の見えない暗闇を照らし出す術は、桔梗にとって沖田で____
澄朔にとっての生きる希望となっていたのは紛れもなく桔梗の存在だけだった。
壊されていく。
遠ざかっていく。
失っていく。
______未来が______
______幸せが______
______命が_______
初めて死んでゆく恐怖と、痛みを感じた。