浅葱色が愛した嘘





桔梗は正面から突っ込んだ。




妖である桔梗に、人間が勝てる訳などない。



力強く振り下ろされた刀を
かろうじて桂は受太刀をする。



『…………くっ、』



間一髪。




しかし、桂は受け止めるだけで精一杯だった。






『お前に分かるか?



大切なものを失い、居場所を失い、

絶望を見た私の気持ちが。

お前だけは絶対に許さない。』






ぶつかり合っていた二つの力は


やがて桔梗が、桂を上回り、

そのまま桔梗は刀を振り下ろした。






血飛沫が夜空に舞う。



色鮮やかな紅色。


満月は血にまみれた桂を照らし、その死を祝うかのように、千年桜の花びらは吹き荒れる。













_______________終わった。




八年間の時を越え、

待ち焦がれていた復讐を成し遂げた瞬間。




血の付いた刀はギラギラと刃を輝かせ、魂共に潤いを得た。




戦いを終えた桔梗の体からスーッと妖力が引いていく。



目の色は普段の群青色。


牙もなく、殺気もない。





『…………!?!?



っく…げほげほッ…』





今までは妖力に頼り、痛みはあまり感じられなかった。




しかし今、力を封じた事によって傷の負担が一気に桔梗を襲った。




身体中は切り裂かれた傷から血で赤く染まり、



あまりの痛さに膝をつく。






『桔梗!!!!』





すぐ近くまで来ていた沖田は桔梗の異変に気づき、駆け寄ったと同時にそのまま桔梗を抱きしめた。





『…………総司?』




桔梗の声は聞いた事がないほどに小さく弱々しい。




『もういい、喋るな。


こんなボロボロになるまで戦って…
君はどうかしてるよ。』





『そうだな。本当どうかしてる。


あんなに妖力解放したのは初めてだった。

でも、総司を守れた。
それだけでいい。』




桔梗は優しく笑った。


< 179 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop