浅葱色が愛した嘘
桔梗は正面から突っ込んだ。
妖である桔梗に、人間が勝てる訳などない。
力強く振り下ろされた刀を
かろうじて桂は受太刀をする。
『…………くっ、』
間一髪。
しかし、桂は受け止めるだけで精一杯だった。
『お前に分かるか?
大切なものを失い、居場所を失い、
絶望を見た私の気持ちが。
お前だけは絶対に許さない。』
ぶつかり合っていた二つの力は
やがて桔梗が、桂を上回り、
そのまま桔梗は刀を振り下ろした。
血飛沫が夜空に舞う。
色鮮やかな紅色。
満月は血にまみれた桂を照らし、その死を祝うかのように、千年桜の花びらは吹き荒れる。
_______________終わった。
八年間の時を越え、
待ち焦がれていた復讐を成し遂げた瞬間。
血の付いた刀はギラギラと刃を輝かせ、魂共に潤いを得た。
戦いを終えた桔梗の体からスーッと妖力が引いていく。
目の色は普段の群青色。
牙もなく、殺気もない。
『…………!?!?
っく…げほげほッ…』
今までは妖力に頼り、痛みはあまり感じられなかった。
しかし今、力を封じた事によって傷の負担が一気に桔梗を襲った。
身体中は切り裂かれた傷から血で赤く染まり、
あまりの痛さに膝をつく。
『桔梗!!!!』
すぐ近くまで来ていた沖田は桔梗の異変に気づき、駆け寄ったと同時にそのまま桔梗を抱きしめた。
『…………総司?』
桔梗の声は聞いた事がないほどに小さく弱々しい。
『もういい、喋るな。
こんなボロボロになるまで戦って…
君はどうかしてるよ。』
『そうだな。本当どうかしてる。
あんなに妖力解放したのは初めてだった。
でも、総司を守れた。
それだけでいい。』
桔梗は優しく笑った。