浅葱色が愛した嘘
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『出来る事はやったで。
後は澄朔の体力次第や。』
新撰組に戻れば桔梗はまた澄朔と呼ばれる。
桔梗は全身に包帯を巻かれ、痛々しい。
いつ目が覚めるかわからない状態だった。
『………桔梗。』
『大丈夫だ、総司。
この女はそんな簡単に死ぬ女じゃねぇよ。』
土方は自分の右手を沖田の肩にポンッと置いた。
沖田の体が小刻みに震えているのが分かる。
正気を保てと言っても無理な話だよな。
この様子じゃ、総司もしばらく隊務をまともに出来やしねぇ。
しばらく休暇でも取らせるか……
だが、問題は桔梗…お前だ。
もしもお前が死んだら、総司は完全に生きた屍になる。
総司のために…新撰組のために戻ってきてくれ。
土方はギュッと拳を握りしめ、静かにその場を後にした。
山崎も今は二人きりにすべきだと悟ったのか、
何も言わず土方の後に続いて部屋を出た。
残された沖田は桔梗の手を両手で優しく包みこみ、ただ意識が戻る事だけを祈っている。
守ってやれなくてごめん。
何も出来なくてごめん。
僕は無力だ。
いつも一番大事な時に、僕は愛する人さえも守れない。
国のために刀を抜き、
そのに守るものさえあれば、理由なんていらなかった。
桔梗は沖田を守るために、自分の限界を越えた。
体に相当な負担のかかる、完全なる妖力解放は身も心も同時にゆっくりと滅びていく。
桔梗はそれさえも恐れず、惜しむ事なく、自分を犠牲にした。
守られてばかりのこの命は一体、いつになったら誰かを守る役目を果たせるだろう……
『どうしてこうなる……
どうして僕たちは奪われる…
夢も……命も……』
どうか生きてほしい。
桔梗……君が居なくなったら僕は何を生きる希望にすればいい?
お願いだから目を覚まして。
声にならない祈りや叫びは、
涙となって頬を伝った。
その日の夜、沖田は一人、泣き続けた。