浅葱色が愛した嘘






スパーンッ!!






『おい!意識が戻ったって本当か!?』






『澄朔~!!!

心配したで!身体大丈夫なんか?』






桔梗が目を覚まして数刻…



どこから話を聞きつけたのか土方と山崎が沖田の自室を訪れていた。





『あぁ、心配をかけてすまなかった。



もう大丈夫。』




まだ傷は痛むが、多少は動いても問題はない。




桔梗が浮かべる柔らかな笑みに二人はホッと胸をなでおろした。



その後、


近藤や山南、

原田、永倉、藤堂、斎藤らの幹部の人間は入れ替わりで

桔梗の様子を見に来た。



みんな心配していたのか、


桔梗の意識が戻って泣いて喜ぶ者、

食べきれない程の食べ物をもって訪れてきた者など、


桔梗自身、本当に仲間として愛されていると実感した。









『もう大丈夫なんだよな?

もう、全部終わったって事でいいんだな?』






部屋に残ったのは最終的に、


桔梗を除き、沖田、土方だった。



土方は真っ直ぐな眼差しを桔梗に向け、問いかけた。





『……………』






『おい、なんで何も言わない?』





なぜか桔梗は口を閉ざしたまま。






復讐は終わったはずだ。

桂も死んだ。


他にまだやらなきゃいけねぇ事でもあんのかよ。



しかし、桔梗は微笑んだ。






『あぁ、終わったよ。

憎んでいた桂も死んだ。

そして総司と出会い、愛に触れた。
もう私はもう、何も思い残す事はない。』




まるで、最期の言葉かのように、桔梗はそう呟いた。



私に後どれぐらいの時間が残されているのかは分からない。

でも総司と共に過ごす時間が残りわずかなのは確か……


この傷を早く癒し、また新撰組の隊士として最後まで尽くしたい。



彼が愛してくれた女として、


誇りを持って生きたい。






『土方さん、明日から私も一番隊の隊務に参加してもいいか?』





『お前、何言ってやがる。


その怪我じゃ無理だ。
まともに歩けねぇだろ。』




もちろん、今の状況を見れば無理はない。


桔梗の身体には全体的に包帯が巻かれ、傷口だって、癒えてはいない。





『大丈夫だ。

妖力を一時的に解放させ、傷を治すから。』





『そんな事が出来るの?』





沖田は心配そうに桔梗を見つめていた。



桔梗がどこか遠くへ行ってしまいそうで…



桔梗が離れていく気がして…



沖田は嫌な予感を感じていた。




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