浅葱色が愛した嘘
『総司…大丈夫だから、
そこで見ててくれないか?』
自分の身体が、自分の意思とは関係なく妖に近づいている事なんて、言えるはずがなかった。
誰にも何も知らせないままここを離れていくと決めていた。
こうしてまた妖力解放をすれば、確実に妖狐の血は桔梗を支配する。
だけど、どうせ変えられない運命ならば、今更そんな事は惜しまない。
桔梗は全意識を集中させた。
ざわめく血…
ドクンッと脈を打つ。
赤い蜃気楼が桔梗を包んだ。
『うっ………』
身体が熱くなっていくのが分かる。
光はやがて傷口を照らし、その傷を癒していった。
『……!?!?
げほッげほげほッ』
桔梗はゴホリと血の塊を吐いた。
『桔梗!?!?』
沖田は慌てて背中をさする。
腕に巻いてる包帯を取れば、傷は癒え、傷跡さえも見当たらなかった。
『ほら、大丈夫だって。
土方さん、これで文句はないでしょ?』
土方は、はぁ~とため息をつき、
心から納得はしていない、といった様子だったが明日から隊務に参加する事を許可した。
『桔梗…無理はしてないよね?』
土方が部屋を出ていき、
沖田と二人になった頃、沖田は未だ不安で仕方がなかった。
『そんな心配するな。
私は人間じゃない。
そんな簡単には死なないよ。
総司が選んでくれた女だから。』
桔梗は笑った。
妖だと知りながら変わらず愛してくれた沖田を
桔梗はそれ以上に愛していた。
すべてを受け入れてくれた人。
そんな人に出会えただけで幸せだった。