浅葱色が愛した嘘
スパーンッ!!!
『な、なんや!
って…斎藤さん?』
いつもの斎藤なら部屋に入る前に必ず声をかけ、静かに襖を開ける。
こんな荒々しい斎藤を山崎は見たことがなかった。
『てっきり、沖田さんかと思ったわ。
斎藤さんが珍しいやないか。
って…え?澄朔!?』
山崎は斎藤に背負われた桔梗の姿に気がついた。
ぐったりを力を失ったように、斎藤に背負われてい桔梗は息が上がり、苦しそうな様子。
『なにがあったんや!?
とりあえず俺が看るから斎藤さんは
沖田さんと土方さんを呼んでや!』
山崎は慌てて桔梗の脈と心臓の鼓動を確認する。
斎藤が部屋を出て行こうとした時、桔梗は斎藤の羽織を掴みそれを止めた。
『………澄朔?』
『総司にも…土方さんにも…誰にも何も伝えなくていい。
自分で言うから……げほげほ…』
心配させてはいけない。
この体に限界が来ている事を悟られてはいけない。
『頼む…
時が来ればちゃんと話す…』
『……わかった。』
『でも澄朔?
身体は看さしてもらうで?
倒れた事には変わりないんやで…
誰にも今日の事は桔梗から言うまで俺らは黙っとくから安心しぃや。』
斎藤も山崎もこれ以上なにも言えなかった。
斎藤は最後に悲しそうに微笑むと、その場を後にした。