浅葱色が愛した嘘
次の日の夜。
桔梗以外の一番隊の隊士は町の見回りに出ており、沖田も屯所を留守にいた。
『土方さん、澄朔だ。』
『あぁ、どうした?
入れ。』
総司が居ない今だからこそ、桔梗は土方の元を訪れた。
土方の声を確認すると、桔梗はゆっくりと部屋の襖を開けた。
中に入れば相変わらず土方は大量の書物に囲まれている。
桔梗が座ったのを確認すると、土方は開いていた書物を閉じ、桔梗へと視線を移した。
『お前がちゃんと声をかけてから部屋に入ってくるて珍しいじゃねぇか。
そんなかしこまって、変な話でもあんのか?』
『別に私にだって最低限の礼儀はある。
変な話…か。
ふっ、
あながち間違ってはいないかもな。』
桔梗は一人、可笑しそうに笑った。
さぁ、何て言うだろうか。
私がここを出て行くと知ったら。
本当は誰にも言わないつもりだったが、
この人は…上司として慕っているから…
本当の事を伝えてもいいも思えた。
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しばらくの間、静寂な空気が二人を包んだ。
そして桔梗は大きく深呼吸をする。
『土方さん……
私は新撰組を出て行く。』
桔梗から告げられた事は
土方が全く予想もしなかった事だった。
『お前…何言ってやがる…
総司は…あいつはどうすんだよ!』
そうだな。
やっぱりそう言われる事は分かっていた。
『総司には、脱走したと伝えてくれ。
今日ここに来た事も、今から話す事も全て総司には全部、黙っていてほしい。』
桔梗は深く頭を下げた。
土方は
『とりあえず話す事をさっさと話せ。
お前が誰かに頭下げるなんざぁ、よっぽどの事なんだろ?
お前が俺を信頼てここに来たんなら、俺はそれを裏切ったりしねぇよ。』
口調のわりに優しい言葉を桔梗にかけた。