浅葱色が愛した嘘




桔梗はありがとう。

そう告げると、ゆっくりと今の自分の現状を話し始める。




『私の身体はもう限界に近い……』



今でさえ、勝手に妖力が暴走しつつある。


これ以上はここに居るのは危険だ。




『私の兄…澄朔と戦ったあの日、私の身体から三本の尾が生えたのを覚えているか?』





『あぁ…』




『あの時、私は完全なる妖力解放をした。


それ以来、妖の血を抑えていた鎖が解けた。



今の私の身体は自分の意思とは関係なく、妖に近づいてる。』




話していくにつれて、だんだんと体が震えていくのがわかった。



本当は怖い。


怖くて怖くて、いっそ自ら命を断ちたいぐらいだ。


でも、総司との子どもが自分の中に宿っているなら尚更、


血塗られた運命を最後の最後まで美しく生きようと思った。



『つまり私は時期、本物の化け物になる。

そうしたら、ここにいる仲間も殺しかねない。

私はそれを一番避けたいんだ。』



土方は何も言わなかった。


いや、何も言えなかったんだ。


桔梗の目はあまりにも力強く、全てを受け入れ、未来を見据えていた。



『お前はもう、次に進むんだな。


それは俺が止めても無駄か?』




『あぁ、例え副長命令だとしても、今回ばかりは聞き入れられない。



それに私は独りじゃないから大丈夫だ。』





『…………???


それはどういう事だ?』





土方の問いかけに

桔梗は優しく微笑み、自分の両手をお腹に当てた。





『まさか……総司の?』





土方は桔梗に子どもがいる事を悟ったのか、信じられない様子。





『あぁ、総司の子だ。


この子は妖と人間の血を引く、半妖。


三人で暮らせたらどれだけ幸せなんだろうな。』





やがては離れなければいけない。


だったら、今離れてしまおう。




桔梗の考えが変わる事はない。




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