浅葱色が愛した嘘
『強いお前が泣く時は決まって
総司の事ばかりだな。』
一度は愛した女は
やはり、どこまでも強く、気高く凛々しかった。
俺が初めて惚れた女_____。
お前の強さも弱さも俺は分かってるつもりだ。
だから、その役目を引き受けてやる。
桔梗が総司を心から愛してると伝わったから。
俺はアイツに嘘をつこう。
『明日からもうお前は居ないんだよな?』
桔梗は黙って首を縦に振る。
『わかった。
なら俺は明日、
総司をはじめ、新撰組の全隊士にお前が脱走したと伝える。
見つけ次第、殺せとも伝えるぞ?』
桔梗は悲しそうに、切なそうに、微笑んだ。
これでいいんだ。これで……
何も悔いはない。
『土方さん、ありがとう。
もうこれで、貴方と言葉を交わすのも最後だ。
本当はみんなにお礼を言いたかった。
後の事は頼んだぞ。』
ゆっくりと立ち上がり、そのまま振り返る事なく、桔梗は副長室を後にした。
土方は本当にこれでよかったのかと、ジッと襖の方を眺めていた。
『………山崎。
そこにいるんだろ?』
土方の独り言のような言葉と同時に、天井から黒い影が下りてきた。
『すまんな、土方さん…
ほんまは聞くつもりなんか無かったんやで?』
『あぁ、分かってるよ。
あの、桔梗が山崎の存在に気づかなかったか……
本当は今一番辛いのはアイツなんだろうな。
今の俺は何が正しいのかなんて分かんねぇよ。』
そんな事、誰にも分からない。
何が正しくて、何が間違いなのか…
正義は勝つのか、勝ったものが正義か…
答えなんて、いつ見つかるか知る人などいるはずがない。