浅葱色が愛した嘘
日が完全に沈みきり、隊士たちも夕食を終え、それぞれの部屋に戻った頃、
少し遅れて沖田も自室に帰ってきた。
『桔梗…戻ってたんだ?
今日ずっと姿が見えなかったから心配したよ。』
優しい声で名前を呼び、
沖田はギュッと桔梗を抱きしめた。
ほんのりと、沖田からは石鹸の香りが漂う。
愛おしくてたまらない。
こんなにも…こんなにも…
そして、こうして触れ合えるのも今宵が最後。
もう、二度会えない。
愛されていると、実感すらも出来ない。
桔梗は自ら沖田に接吻をした。
桔梗から舌を絡ませ、沖田の首にがっちりと両腕を回し、まるでしがみつくようにして沖田の中にいた。
そんな事は初めてだった。
『き、桔梗?
どうしたの?』
いつもとは違う桔梗の様子に沖田は戸惑っていた。
まるで焦っているような、そんな気がして……
『総司……抱いて?』
最後に愛されたという思い出だけでも持ってゆこう。
自分の中で乱れるように舞い、酔い痴れる桔梗を
沖田は何度見ても美しく思った。
『ごめん、桔梗。
今日は優しく出来そうにない。』
『優しくしなくたっていい。
その痛みが幸せだから。
しっかりと刻み込んで。』
桔梗の甘い声が夜空に響く。
何度も重なり合う二人の体が月明かりに照らされる。
これが最後になるなんて、沖田が知るはずがなかった。