浅葱色が愛した嘘
桔梗の身体は肉体的にも限界だった。
肉は裂かれ、貫かれ、
本来ならば立ってはいられない。
しかし、妖の血が支配しかけている身体だからこそ、限界を超えていようが、その身体は敵の血を欲した。
乾きが癒えない_____。
喉が潤わない______。
まだ、少しだけ桔梗の意識は残っていた。
だから、自ら命を絶とうとしても、妖の血がそれを許してはくれない。
もう、意識は残っていようとも、
身体は妖の血の手の中にあった_____。
百を超える人間を次から次へと桔梗は自らの(爪)で引き裂く。
人々は恐怖のあまり腰が抜け、身動きがとれない者もいた。
血飛沫は満開の花びらを咲かせたかのように、華麗に飛び散り、当たり一面を真っ赤に染めた。
それをあざ笑うかのように、空に浮かぶ満月も赤い_____。
そして…………
『桔梗ー!!!!!』
盲ろうとする意識の中、
かすかに聞こえる誰かの声。