浅葱色が愛した嘘





桔梗の身体は肉体的にも限界だった。



肉は裂かれ、貫かれ、

本来ならば立ってはいられない。


しかし、妖の血が支配しかけている身体だからこそ、限界を超えていようが、その身体は敵の血を欲した。



乾きが癒えない_____。


喉が潤わない______。




まだ、少しだけ桔梗の意識は残っていた。




だから、自ら命を絶とうとしても、妖の血がそれを許してはくれない。




もう、意識は残っていようとも、
身体は妖の血の手の中にあった_____。




百を超える人間を次から次へと桔梗は自らの(爪)で引き裂く。




人々は恐怖のあまり腰が抜け、身動きがとれない者もいた。




血飛沫は満開の花びらを咲かせたかのように、華麗に飛び散り、当たり一面を真っ赤に染めた。



それをあざ笑うかのように、空に浮かぶ満月も赤い_____。




そして…………






『桔梗ー!!!!!』




盲ろうとする意識の中、

かすかに聞こえる誰かの声。


< 244 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop