浅葱色が愛した嘘


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「うっ……ここは?」



意識が戻った頃には見慣れない天井が桔梗の視界に広がった。


「気がついたみたいだね。」


「沖田…か。」


そこには刀を手入れしている沖田の姿。


「ここは僕の自室だよ。

君、試合中に倒れたんだ。」


沖田は手入れをしていた刀をそっと鞘に納め桔梗が寝ている布団の横に座った。

そして黙ったまま桔梗を見つめる。


全てを見透かすような真っ黒な黒真珠。


そしてフッと笑い優しい表情を見せたかと思うと一気に冷めたような目つきで桔梗を見た。



「なんで女の子がこんな所にいるの?

土方さんが気づかない訳ないし
一体どういうつもりなのかな?」


背筋が凍った。

感情を映さない人形のような目。


整った顔立ちに綺麗な肌が一層、恐ろしく感じられる。


「交換条件だ。」


「交換条件?一体なんの?」


「刀を返す代わりに新撰組の隊士としてここに居ろ。と
土方とやらに言われた。」


沖田は目をまん丸にさせると深いため息をついた。



「あの人は一体何を考えてんだよ。

こんな若い女の子を隊士だなんて…

ましてやここは女禁制だ。
でも腕は確か……
まぁ土方さんが戦力として利用したいのも分かるけど。」



((利用))

その言葉に桔梗はかすかに反応した。

だが、土方も他の隊士も桔梗の本当の力を知らない。
だから別に何だって良かった。


それに


「長州藩である桂小五郎を殺せるのであればそれだけでいい。」


私の目的はそれだけだ。と
そう呟いた。





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