浅葱色が愛した嘘
やれやれ。そういった様子の沖田はそのまま桔梗の横へと腰を下ろした。
桔梗の髪は綺麗な黒髪。
その髪を頭の高い位置で結っていても髪の長さは腰まである。
昨日の返り血を洗い流すのには相当な時間がかかったはずだ。
今の桔梗からは何も感じず、何も伝わってこない。
しかし、昨日。
あの寺で、桔梗が長州の人間を斬っている時、沖田は確かに感じていた。
異様な殺気。
他の者からは感じた事のない恐怖。
人を殺す事になんの躊躇いもなく、
恨みと憎しみに満ちた表情。
あの時の桔梗は別人だった。
『ねぇ、澄朔?』
『ん?』
『そんなに長州の奴らが憎い?』
沖田の言葉に桔梗は箸を止めた。
『昨日の君は別人だった。
まるで、血の海に潜む鬼神…。』
その言葉に桔梗は自分の拳を強く握った。
爪が掌に食い込み、血が滲むまで強く…強く…。
『お、おい。澄朔!手!』
沖田は慌て桔梗の手を取る。
が、しかし。
桔梗は素早く沖田の手を払った。