浅葱色が愛した嘘
廓の一角、(美楼屋)という場所で土方はふと、足を止めた。
そこには花車らしき女の姿。
『お待ちしておりました。土方様。
どうぞ、上がっておくんなんし。』
案内されるまま、辿り着いた先には金箔がなんとも鮮やかに光る襖。
『土方だ。入るぞ。』
言葉と同時に部屋に襖を開ける。
『悪りぃ、ちと遅れたな。』
『あら、土方さん。
時間など気にしておりんせん。
さぁ、座っておくんなんし。』
島原で最も位置の高い花魁。
他の遊女とは違う雰囲気を持っていた。
『吉乃(よしの)……?』
桔梗はポツリと誰かの名前を口にした。
『お前…吉乃ではないのか?』
『まさかその声は…桔梗でありんすか?』
花魁の名は吉乃。
桔梗とは昔、少しだけ顔を合わせていた。
『なんだ、お前たち知り合いか?』
土方も驚いていた。
あの桔梗に、島原での知り合いがいたという事に。
どんな巡り合わせかわからないがこの二人がまた出会った。
桔梗は幼い頃に出来た友との再会に喜んでいた。
『じゃぁ、吉乃。
後は頼んだぞ。』
『あい。
土方様もお気をつけておくんなんし。』
こうして三日間の侵入捜査が始まった。