浅葱色が愛した嘘
土方が去った後、
二人はしばらくお互いの顔を見つめていた。
『桔梗…お前と会うのは七年ぶりか?』
『あぁ、そうだな。
まさか島原の花魁になっているとは思わなかった。』
『わっちにも色々あったんじゃ。
しかし
わっちとて、お前が新撰組になってるとは夢にも思わなかったでありんすよ』
『私にも色々あったんだ。』
先ほど吉乃の言った事をそのまま桔梗は言い返した。
それが二人にはなんだかおかしくて、
思わず顔を見合わせて笑い合う。
二人はしばし、懐かしの話で盛り上がっていた。
あまり長い間、一緒には過ごしてはいなかったが、
桔梗にとって初めて出来た友。
過ごした時間は浅くとも、その思い出は濃く、深かった。
『もっと話をしたいが時間がないでありんす。
さっそくじゃが、着替えておくんなんし。
今のままでも十分、男としてなら美しいが、
遊女としては、ちと欠けておる。
着物は禿に用意をさせておいた。
着付けはわっちがやるでありんす故。』
七年ぶりに再会した友は美しく、立派ななっていた。
女にとって地獄であるここ島原で十分に生きていける強き、気高い女。
島原が誇る、最高の女。