浅葱色が愛した嘘
初めて着るちゃんとした着物は重く、締め付けられ息苦しい。
こんなものをいつも身につけていると思うと、同じ女でも尊敬してしまう程。
桔梗は人斬りだ。
どちらかというと、動きやすい身軽な格好しかしたことがない。
吉乃は桔梗の着付けが終わると、次に髪、そして化粧をした。
『ほぉ、上出来じゃ。
そこら辺の遊女よりはよっぽど良い上玉な女でありんす。
ほれ、鏡で自分を見ておくんなんし。』
吉乃に手鏡を渡された桔梗はそっと自分の姿を見た。
『これが、私か?』
『あぁ、綺麗でありんしょう?
美しくなったでありんすなぁ。』
吉乃は優しく微笑んだ。
桔梗に与えられた隊務は
吉原に出入りしている長州の者から内部の情報を聞き出す事。
土方がいつも与えられる隊務のほとんどは長州に関する事ばかり。
これはきっと、土方なりの気遣いなのだろうと、桔梗はわかっていた。