浅葱色が愛した嘘




桔梗はただ無言で酒を注ぐ。


天霧という男はただただ注がれた酒を口にしていた。





『綺麗な顔をしているのに、
無愛想な女だな。』





天霧になにを言われても桔梗は何も答えなかった。



ちっ、と横から舌打ちが聞こえてくる。





『天霧様!!』




不意に誰かが天霧の名前を呼ぶ。


しかし、天霧は何も反応しない。




『天霧様!!』




『呼ばれているでありんすよ?』





桔梗の声に天霧はやっと自分が呼ばれているのだと気づいた。





天霧を呼んだ男はそっと耳打ちをする。





(桂様からの伝言です。

決行は次の満月の夜___とのこです。)




桔梗はハッキリと聞こえていた。



桂_______。


もっとも殺したいと願い、

桂の首を取るために今まで生きてきた。




桔梗は顔色を変えることなく、

ただ差し出された器に酒をを注ぎつづける。


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