浅葱色が愛した嘘
夜空には綺麗な三日月が顔を覗かせている。
風一つない静かな道は時折、気味の悪ささえも感じられる程だ。
『なぁ、朱雀とやら。
お前の本当の名は何だ?』
天霧の目はまるで土方のように鋭く光っていた。
それと同時の、三日月は黒い雲に覆われる。
桔梗はフッと笑い、天霧を見た。
『わっちの名前は朱雀じゃ。
その他の何者でもない。
それに
わっちの事を言う前に
貴方様も偽名を使っていらっしゃるではありんせんか?』
桔梗は全てを見透かしたような深い群青色の瞳で天霧を映した。
その目に迷いはなく、まるで真実なのだと確信しているような真っ直ぐな瞳。
『なぜ、そう思う?』
『貴方は先ほど、他の者に天霧と呼ばれても反応しなかったでありんす。
しかし、耳が聞こえない訳でもない。
つまり、偽名であり、その名で呼ばれる事はあまり慣れていないと言うこと。
_________違いますか?』
フッ_____。
天霧は面白そうに笑い煙管に火をつけ煙をふかした。
『中々いい勘もってるじゃねぇか。
お前の読みは正解だ。
本当の名を教えてほしいか?』
『別に。
わっちはどんな名前であろうが、
興味はないでありんすよ。』
そう言って桔梗は天霧から煙管を取り上げると、
自分の口元に運び、口をつけ煙を吸った。