浅葱色が愛した嘘
『威勢のいい女だな。
気に入った。
朱雀_____。
お前に俺の本当の名前を教えてやる。
俺は高杉晋作だ。』
ドクンッ________。
………高杉晋作だと?
あの日、あの時、
桂の隣にいた人物……
桂は隣にいた男を(高杉)と呼んでいた。
それに感じた事のある空気。
見覚えのある顔。
間違いない、こいつだ。
桔梗は全てを確信した。
『ここまででいい。
ご苦労だった。』
門の前まで来ると、高杉は自分の煙管を桔梗に渡した。
『これは____?』
『見ての通り煙管だ。
お前にやる。』
桔梗は頭を下げると高杉を見送った。
数歩歩いた所で高杉はふと立ち止まる。
『お前___なんでそんの血の臭いがするんだ?』
振り返りざま、高杉はしかっかりと桔梗をとらえる。
何も、気づかれてはいけない。
決して悟われてはいけない。
私があの時の女である事と、
私があの時の妖である事を……
桔梗は笑った。
『気のせいでありんしょう。
いや、貴方の臭いがついたかもしれないでありんすなぁ。
お互い様じゃ。』
高杉は(そうか)
と言い残すと、それ以上は何も言わなかった。