浅葱色が愛した嘘
高杉を送った桔梗は一人常世の町を歩いた。
ここはまた、外の町とは別世界。
広いようで狭い。
自由がない事ぐらい、たった一日でも分かる。
門の外がこれほどまでに、恋しくなるなんて、桔梗は思ってもいなかった。
女を捨て、己を捨て、ただ抱かれるためだけに、生きる屍となって高価な物に身を包み、明日すら映さぬ瞳で、作り笑いを浮かべる。
何度、世が明けようが何も変わらない。
こんな世界で生きる強さなど、桔梗は持ち合わせていなかった。
桔梗が持つ強さはまた違う。
女を捨て、己を捨て、
ただ復讐のためだけに生きる。
それ以外は何もなかった。
きっと桔梗は刀を失えばただの女になる。
だが、それは桔梗の死を意味しているのと同じであった。