浅葱色が愛した嘘



高杉を送った桔梗は一人常世の町を歩いた。



ここはまた、外の町とは別世界。



広いようで狭い。


自由がない事ぐらい、たった一日でも分かる。


門の外がこれほどまでに、恋しくなるなんて、桔梗は思ってもいなかった。




女を捨て、己を捨て、ただ抱かれるためだけに、生きる屍となって高価な物に身を包み、明日すら映さぬ瞳で、作り笑いを浮かべる。




何度、世が明けようが何も変わらない。



こんな世界で生きる強さなど、桔梗は持ち合わせていなかった。




桔梗が持つ強さはまた違う。


女を捨て、己を捨て、

ただ復讐のためだけに生きる。


それ以外は何もなかった。



きっと桔梗は刀を失えばただの女になる。



だが、それは桔梗の死を意味しているのと同じであった。


< 78 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop