浅葱色が愛した嘘
『すまぬ。
部屋を間違えた………
邪魔をしたな。』
その光景を見た桔梗の声は震えていた。
なぜ、どうして、沖田さんがここに?
なぜ、どうして、沖田さんは遊女を抱いている?
桔梗は平常心でいられる余裕がなかった。
今まさしく自分の目に映っているのは、
髪が乱れ、快楽に溺れている遊女と、
それを抱きかかえてる沖田の姿。
桔梗はバンッと襖を閉めると廊下を勢いよく走った。
『おい!待て!澄朔!!!』
『きゃ!?!?』
沖田は空女を突き飛ばし、すぐに桔梗を追いかけた。
なんで、あいつがここにいるんだよ。
なんで、よりによって、今この状況を見られるんだよ。
沖田は必死で桔梗を探した。
無我夢中で走り回り、そこら中を探しても桔梗を見つける事が出来なかった。
『クソッ!!!!』
沖田は勢いよくその場にあった壁を殴る。
その手は赤くなり、血が滲んでいた。
澄朔………
どうして。
どうして、君は僕から逃げる。
どうして、君は僕を分かってくれないんだ。
沖田は悔しそうにその場に崩れた。
『はっ、はっ、
情けなねぇ。
悪いのは、全部僕なのに。』
沖田は力無く、自分をあざ笑うかのように笑い、
島原を出て行った。