浅葱色が愛した嘘
『泣いているのか?』
桔梗の顔を見るなり、土方はいつもとは違う事にすぐ気がついた。
先ほど走ったせいか、髪は乱れ、着物も少し着崩れている。
それに目も赤い。
普段とは違って色っぽさを感じた。
今まで土方が見てきた桔梗は
男勝りでたくましく、刀に生きる強い女。
しかし、今ではそれとは真逆の姿だった。
女らしく、弱々しい。
小さい肩を小刻みに震わせ、
必死に声を押し殺して泣く…
ただのか弱い女だ______。
『泣いてなどいない。
何か用か。』
桔梗は土方に背中を向け、強くその目を擦った。
『バカッ!
そんな勢いよく擦るんじゃねぇ。』
桔梗の両手を引っ張り、顔をこちらの方へ強制的に向けさせる。
『やめろっ……見るな。』
両手を掴まれてる桔梗は顔を隠す術を無くし、とっさにうつむいた。
声は今にも消えそうで、
体は震えているばかり。
桔梗の両手を土方は片手で固定し、空いたもう一つの手で桔梗の顎をクイっと上げた。
『阿保!
見るなと言っただろう!』
あぁ、やっぱりこいつも女だ___。
土方の目に映ったのは汚れのない、綺麗な涙を流す桔梗の姿だった。