浅葱色が愛した嘘
『頼む…見ないでくれ。』
いつもなら、生意気で憎まれ口しか言わない桔梗____。
戦場では心のない、人斬りである桔梗____。
そんな桔梗が今では自分の目の前で泣いている。
土方はそっと、その小さな体を抱きしめた。
『誰も、何も見てねぇよ。
お前が泣いてる所なんて。』
土方は優しい手つきで桔梗の頭を何度も撫でる。
『誰も泣いていないと言っているだろ。』
涙声で言われる土方だが、何も説得力などない。
こいつなりの強がりなのだろう。と悟っていた。
『はいはい。そうだった。
誰も泣いてねぇよな。
ただお前は風が眩しいだけなんだよな。』
月明かりが常世の町を照らし、
穏やかな風が人々の身に取り巻く。
土方は桔梗が壊れないように。
いつまでもそっと、その両手に抱いていた。