浅葱色が愛した嘘
次の日の朝、桔梗は自然に目を覚ました。
昨日確かに居たであろう土方の姿は今もうどこにもない。
重たい体をゆっくりと起こし鏡の前で座る。
『ふっ、なんとも情けない姿だな。
化け物である私が
人間ごときにこんなにも愚かになるのか。』
鏡に映った自分自身を軽蔑した。
今日、支度を終えれば新撰組の屯所に戻らなければいけない。
部屋だって沖田と同じだ。
その事が桔梗の心を締め付ける。
昨日、泣いたせいで腫れた自分の目を洗いに水道の前で顔を洗う。
まだ客が出入りしていない、今の時間は静かで…逆に傷に染みた。
『朱雀か_______。』
不意に吉原での偽名である名前を呼ばれ振り返れば高杉の姿があった。
『高……天霧様。
どうしてここに?』
『別に高杉でいい。
今は誰も居ないからな___。』
高杉はそう言って眩しそうに太陽の光を見据え少しばかり目を細めた。