仮面のシンデレラ《外伝》


「映画、楽しみだね。」


僕は、なんとなく恥ずかしくなって話題を逸らした。

すると、彼女はにこりと微笑んでバッグの中から一冊の本を取り出す。


「見て、湊人くん。私も原作の本買っちゃったの…!本屋さんで実写映画化フェアをやってて。」


「!そうなんだ。じゃあ、予習はバッチリだね。」


僕の言葉にこくこく、と頷く彼女は、低いヒールを鳴らして歩きながら言葉を続けた。


「何回も読んだから展開は知ってるけど…、映像で見るとやっぱり感動が違うんだろうね。」


楽しげに歩く彼女を、僕は微笑ましげに見つめた。

その時。

彼女がスマホを取り出して口を開いた。


「映画館は電車に乗っていくんだよね?時間調べる?」


僕は、そんな彼女に答える。


「時間なら調べてあるよ。あと10分後にくるやつに乗れば直通だから大丈夫。」


「そうなんだ。さすがだね!」


そうこうして駅に着き、改札を通ろうとした時だった。


「あ…」


彼女が、小さく声をあげた。

僕が「?」と彼女を見ると、彼女はおずおずと僕の後ろに下がって口を開く。


「湊人くん、先に行って。」


「え?お金チャージしてなかった?待ってようか?」


「あっ、違う違う!ついていくから大丈夫…!」


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