シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
バイトのない週末。
掃除とたまった洗濯物を片付けて、悠斗を市営住宅内にある公園に連れてきた。
桜の花は散り落ち、鮮やかな若葉を茂らせている。


錆びたブランコとすべり台が寂しく建っているだけの名ばかりの公園。数人の小学生たちが駆け回っていた。

私はベンチにかけてそれを見守る。

悠斗は3歳。やんちゃ盛りだ。
すべり台にひとりで登り、滑っては登り、を繰り返している。だいぶ手はかからなくなった。

悠斗が元気に育ってくれたことが唯一の幸せ。

名前は父親の悠季くんから一文字もらって悠斗とつけた。
日に日に悠季くんに似てくる悠斗に私の顔はほころぶ。

あのパーティーから1ヶ月が経とうとしていた。
悠季くんにはあれ以来会っていない。
結論から言うと、私は連絡しなかった。

名刺にはサトーホテルズグループ総裁補佐・佐藤悠季と書かれていた。本社秘書室の電話番号とアドレスが記載されている。いずれはホテルグループを継ぐであろう肩書きに私は躊躇した。

隠し子がいるなんて知れたら、悠季くんに迷惑がかかる。

悠季くんに会ったらきっと悠斗の存在も知られてしまう。それだけはなんとしても避けたかった。
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