シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
低い排気音が聞こえて公道を見やる。市営住宅に似合わない外車が駐車場に入ってくるところだった。道を間違えて迷い込んだのかと思ったが、その紺色のルノーは戸惑うことなく駐車場の枠内で停まった。
そこから降りてきたのは若い男性。パーカーに細身のブラックジーンズ。サラサラの髪。その風貌に私の胸が無意識に高鳴る。
悠季くん?
彼は手元のメモを確認し、キョロキョロとあたりをうかがっている。
どうしてここに?
隙間から雑草が伸びる歩道をゆっくりと歩いてくる。近づいてくるのと比例して私の鼓動はさらに激しくなった。
私はとっさに背を向けた。悠斗といるところを見られたくない。悠斗を見たら自分の子だってすぐ気づくはず。だってこんなに似ているんだから。
私は息を潜めて動かずにいた。隔てるものがなにもない野ざらしの公園で。
でもじりじりと近づく足音。それは背後を通り過ぎずにどんどん近づいてくる。
足音はすぐ後ろで止まった。感じる人の気配と温度。それでも私は振り返らずにいた。
『……早百合さん』
背後から降り注ぐ優しい声。
『探したよ』