シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
『隣、いい? 座るね』
塗装の剥げたベンチ、悠季くんは私の隣に座った。
私たちの前には砂場、その向こうにすべり台がある。
そこで遊んでいるのは悠斗だけだ。小学生はいつの間にか散れていた。
幼子をひとりで遊ばせておく母親などいない。必然的にあの子の母親は私、ということになる。問題はあの子の父親のこと。悠季くんの子どもではないとごまかすことは可能だろうか。
私はここまで来て告知するべきか悩んでいた。
すべり台に登る悠斗を見つめる。サラサラの黒髪、幼子にしては筋の通った鼻、薄い唇。
悠季くんの面影がある。
何を話していいかわからず、しばらく無言でいた。
先に口を開いたのは悠季くんだった。
『元気そうだね』
『うん……』
『急にいなくなったから心配した。なにか事件や事故に巻き込まれたんじゃないかって、ずっと。毎日、気が気じゃなくて、うろたえて。でも、よかった。こうして早百合さんにまた会えて』
隣にいる悠季くんを見上げる。悠季くんの瞳が潤んでいく。
その表情に彼が本気で心配していたことが伝わる。何の説明もなしに消えたことを私は反省した。確かに仕方のないことではあったけれど。
『怒ってるよね……黙っていなくなったこと』
『ううん。怒るっていうより寂しかった。僕のことどうでもよかったのかな、って』
『違う!、そんなことない。私、一日たりとも悠季くんを忘れたことないから』