シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

なのに悠季くんは謝ってくれた。
謝るのは私の方なのに。

そよ風が葉桜を揺らし、木陰が砂場で踊る。初夏の爽やかな昼下がり。
隣にいる悠季くんから伝わる暖かい温度。


あ。
私の指に悠季くんの指が触れ、指先だけ絡められた。よくこうして隣合って座って手をつないだ。カフェのカウンター席で、公園で、駅までの歩道で。

制服姿の悠季くんが脳裏に浮かぶ。楽しくてドキドキして、切なくてつらくて。そんな想いと一緒に。

なんの言葉も交わしていないのに、一緒にいるだけですぐにあの頃にもどれてしまう。

このまま……もどれたら。


そのときだった。悠斗の変な悲鳴が聞こえた。着地に失敗して転んでしまったらしい。立ち上がりとっさに駆け寄ると、悠斗が声を上げて泣きはじめた。

悠斗の膝がすりむけている。そこに砂もついていた。


『血が出てるね。手当しないと。部屋にもどる?』
『うん』
『なら僕がだっこするよ、3階でしょ?』
『でも』
『遠慮しないで。早く手当しないと』
『ありがとう』


悠季くんは軽々と悠斗を抱き上げ、建物の中に入っていく。私は先回りして彼を階段に誘導した。

さびたドアの鍵を開け、部屋に入り、悠斗を裸にし、汗と砂をシャワーで流した。風邪を引かないようにタオルで丁寧に拭き、部屋着を着せた。
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