シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
あれから悠季くんから連絡が来たのはひと月ほどした梅雨の時期だった。
鬱陶しく降る雨に私は辟易していた。洗濯物は乾かずたまる一方、外遊びのできない悠斗はぐずり、鬱々としていた。
昼休み、携帯電話に着信があることに気づいて慌てて発信元を確認した。保育園からだったら、所長にお願いして早退させてもらわないといけない。でもその名前に私の心臓は高鳴った。
悠季くんの番号だったから。
折り返しかけると、悠季くんはすぐに出た。
『旅行にいかない? 保育園も会社も夏休みあるでしょ? 悠斗くんを連れていきたいところはある?』
そんな提案に乗り、私は海と答えた。悠斗はまだ旅行に出たことがない。実家を勘当された私は帰省することもなかったし、金銭的にも悠斗を連れ出す余裕がなかったから。
悠季くんは、近場の宿を探しとくね、と言ってくれた。
胸がときめく。
*―*―*
会社が休みになる8月中旬、私と悠斗は悠季くんの車に乗って海に出かけた。波の穏やかな内海で遠浅、家族連れに人気の海水浴場だった。