シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

しばらくしてお手洗いから帰ってきた悠季くんはチラシのようなものを手にしていた。


『早百合さん、これなんだけど』


おもむろに差し出されたパンフレットは新築マンションのものだった。リビングから漏れる光でそれに目を通す。

駅から徒歩10分、ショッピングモールや小学校、公園などが近場にそろい、間取りは3LDKから5LDK、日当たり良好。条件のそろった物件だ。

賃貸と販売、両方あるらしい。パンフレットだから詳しい金額は書かれていないけれど、どちらにしても普通のサラリーマンでは躊躇するほどの価格のはず。


『気に入った?』
『素敵な部屋ね。でも、どうして? 買うの?』
『うん。大学を卒業したら家を出ようと思ってる。ここなら早百合さんと悠斗くんを呼べるかな、って』


悠季くんと、一緒に?

私はもう一度パンフレットを眺めた。3人で暮らす姿を想像してみた。真新しいキッチンで料理をし、その向こうで悠季くんと悠斗がじゃれ合うようにソファで遊ぶ姿を。まるで夢のようだ。

隣にいた悠季くんの手が私の手に重ねられた。


『早百合さん、僕と結婚して。一緒に暮らしたい』
『悠季くん……』
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