【完】今日も明日も、俺はキミを好きになる。


ヒロを見つけたというその日から、1日も途切れることなく備忘録は紡がれていた。


……不思議だ。

これを書いてる俺は、毎日毎日記憶がリセットされているはずなのに、毎日ヒロに恋している。

文面から、ヒロへの恋心が伝わってくる。


そして、それを読んでいる俺もまた、名前を知ったのすら今日なのに、ヒロへの恋心が元々あったかのような感覚に陥っている。

記憶はないのに、まるでヒロへの想いだけは積もっていた、そんな感覚。


本気で好きだったんだろうな。毎日毎日。


一番最後のページには、1日の記録の後に、こう記されていた。



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明日の俺へ。明日、俺はヒロと地元の水族
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館に行く。
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待ち合わせ場所:最寄りの◯◯駅
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待ち合わせ時間:13時
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俺の記憶はもう危ない。
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ヒロにもう会えないことを伝える。
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「…………」


ノートを見下ろしたまま、思わず言葉をなくす。


これまでの記録を読んで、分かっていた。

ヒロにすべてを明かさず、自分がフェードアウトしようとしていることは。


俺はその場にしゃがみこみ、重い気持ちで目をつむって、小さく息を吐く。


……最悪だ。

よりにもよって、今日、別れを告げなければいけないなんて。





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