暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
しかし、このまま知らない人に売られ奴隷として一生を過ごすなんて死ぬのと同じこと。
私はひと呼吸おくと、男たちがその話で気を取られているスキに全力でその場を離れた。
後ろからは男たちの焦った声が聞こえてくる。
「誰かー!!助けて!!!」
足の遅い私が捕まるのも時間の問題。
近くに置かれてたゴミ箱を倒したりして時間を稼ぎ、細くて暗い道をひたすら走った。
「アニ姉……………!!!!」
2つの分かれ道で、偶然グラントに合流した。
顔が真っ青で、恐らく私が居なくなったあと必死に探してくれたのだろう。
「グラント………!会えて良かった」
ホッとしたのもつかの間で、今はそんな事をしている場合じゃない!
「見ての通り追われてるの!恐らく人身売買を目論む輩………………。兵士は近くにいると聞いたわ。今は逃げましょう」
取りあえず逃げきって、近くにいる兵士に報告するのが現段階で得策だと思ったが、
「俺がここで奴らを食い止める。アニ姉はその隙に兵士をここへ呼んできてくれ」
確かに逃げきった後に男らに逃げられてもたまらない。
証拠もないのに、誰が人身売買を行おうと私を連れ去った男の存在を信じるだろうか。
本当は弟1人にそんな危険任せたくないが、必死に私を見る目に押され、仕方なく走り出した。
光は直ぐそこで、後ろからは剣と剣がぶつかり合う音が聞こえてくる。
(お願い……………どうか無事でいて)
心の中で弟の身を案じながら、光の元へ走る。
「あ、おいっ!!!!」
しかし、男は3人いた為その内の1人が横をすり抜け私の元へ走ってきた。
徐々に距離が縮まってくる。
男の手が前にある私の髪を掴もうと手を伸ばしてきた。
(もう、駄目だ……)
光はあと少しだというのに、ここで捕まってしまうのか?
そんな恐怖から目をギュッと瞑る。