暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
_____ドンッ!!!!
「キャッ!!!」
髪を掴まれる前に、目を瞑っていた私は何かに衝突した。
衝突したのだから痛いと思いきや、そこまで痛くはなく…………………触った手の感触的に衣服だと発覚した私は、直ぐに誰に打つかったのだと悟った。
「早く逃げないと貴方まで危ない目にあってしま………………」
相手は背の高い男の方で、見上げる形になってしまった私。
手はガッチリと男の腰に回している。
恥ずかしい体勢に思わず離れようとしたが、グイッと男の片手で抱きしめられ身動きができない。
抱きしめられる息苦しさから顔を横に向けると、男のもう片方の手に剣が握られているのを発見し、その剣は真っ赤な血で汚れていた。
(……………………そうだ。違和感を感じないわけではなかった。私が髪を掴まれる直前でこの男の方と衝突したのだから、掴まれなくとも今頃悔しがる男の声が聞こえても可笑しくないのに………………………)
私を抱きしめる男の手に逆らいながら、恐る恐る後ろを振り向く。
地面には先程の男が切り捨てられていた。
(……………う"っ)
間近で人の死を見るのは初めての事で、気分が少し悪くなった。