暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
それもあるが遺体を見たとき、心の何処かでモヤモヤしたものを感じた。
助かって嬉しいはずなのに、素直に喜べない。
その感情が一体何だったのかは、駆け寄ってきたグラントによって分かることになった。
「アニ姉!!………っ!!?その男は?」
戻した剣を再び引こうと身構える。
「助けてくれたの」
「………………そうか。奴らの仲間ではなかったようだな」
安心するといつものグラントの顔に戻った。
「子供。奴らはどうした?」
「子供……っ!!…………………いや、みね打ちして取りあえず気絶させたけど?」
男は切り捨て、対するグラントはみね打ちで済ませた。
そうだ。
私の感じていたこのモヤモヤは、なぜ人を殺す必要があったのかという疑問から生まれた違和感。
あの場合、気絶させて逃げるのが1番だというのに、あの人は簡単に人を殺した。平気な顔で。