暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「「「「「お帰りなさいませ」」」」」
表の迫力ある大きな扉から入ると、たくさんの使用人にお出迎えされた。
大理石で出来た廊下の両端に、道をつくるようにズラッと立ち並んだ使用人達。
その中を2人で進んでいく。
こんなに大勢の使用人がお出迎えするところを見ると、この方はもしや国の偉い貴族の方なのかもしれない。
「お帰りをお待ちしておりました」
濃いグレーのフロックコートに身を包み、胸元に白いハンカチを入れた男が近寄ってくると軽く頭を下げた。
確かこの人は何度か見る機会があり、周りからは宰相様と呼ばれていた気がするが、その様な方がこの男に頭を下げるなんて。
「その方は……………?」
いきなり許可無しに連れ込んだこともあり、不思議な目で私を見られる。
それもそうだ。この男が貴族か官僚なのかよく分からないが、勝手に宮殿の中に連れ込むなんて非常識だし、普通に見て可笑しい。
きっと、宰相様もその事が言いたいのだろう。