言い訳~blanc noir~
「私、お堅いイメージがついてるようなんです。自分では全然そんなふうに思った事がないんだけど。知り合いからいつも『千尋さんは生真面目だね』とか『お堅い』とか。それって褒め言葉に思えないんですよね。それに絶対“千尋さん”って“さん”をつけて呼ばれるんですよ」
「僕も千尋さんの事そう呼んでますね」
千尋は苦笑いしながら和樹を見つめた。
「私も椎名千尋になるんだし、椎名さんって呼ぶのはやめます。椎名さんも私の事『千尋』って呼んでください」
「いきなり千尋って呼ぶのは抵抗がありますけど。だけど努力します。千尋は、僕の事どう呼んでくれるんですか?」
「んー」と考えるように目線を上に向けた後、千尋がくすっと笑った。
「“ご主人様”はどうですか?」
手にしていたティーカップが滑り落ちた。
僅かに残っていたアールグレイがスーツに小さな染みを滲ませ、そして、床にカップが叩きつけられる。
かしゃんと乾いた音を響かせ、カップが二つに割れた。
その一瞬の出来事が、まるでスローモーションのように現実味のない映像として目に映る。
和樹は呼吸するのも忘れ、目を大きく見開いたまま言葉を失っていた。
「椎名さんっ! 怪我されてませんか!?」
椅子から立ち上がった千尋が和樹の傍に近寄る。
気付くと和樹は千尋の腕を握っていた。
千尋が驚いたように和樹に視線を向けると真っ青に血の気が引き、顔を固く強張らせた和樹が息を詰まらせながら言葉を発した。
「……あなたは誰ですか?」
「僕も千尋さんの事そう呼んでますね」
千尋は苦笑いしながら和樹を見つめた。
「私も椎名千尋になるんだし、椎名さんって呼ぶのはやめます。椎名さんも私の事『千尋』って呼んでください」
「いきなり千尋って呼ぶのは抵抗がありますけど。だけど努力します。千尋は、僕の事どう呼んでくれるんですか?」
「んー」と考えるように目線を上に向けた後、千尋がくすっと笑った。
「“ご主人様”はどうですか?」
手にしていたティーカップが滑り落ちた。
僅かに残っていたアールグレイがスーツに小さな染みを滲ませ、そして、床にカップが叩きつけられる。
かしゃんと乾いた音を響かせ、カップが二つに割れた。
その一瞬の出来事が、まるでスローモーションのように現実味のない映像として目に映る。
和樹は呼吸するのも忘れ、目を大きく見開いたまま言葉を失っていた。
「椎名さんっ! 怪我されてませんか!?」
椅子から立ち上がった千尋が和樹の傍に近寄る。
気付くと和樹は千尋の腕を握っていた。
千尋が驚いたように和樹に視線を向けると真っ青に血の気が引き、顔を固く強張らせた和樹が息を詰まらせながら言葉を発した。
「……あなたは誰ですか?」