言い訳~blanc noir~

 辺りを見渡すと今度ははっきりと「にゃあ」と聞こえた。

 声が聞こえたほうへ歩き出す。「にゃあ」と声が大きくなる。辿り着いた場所は、公民館に隣接された小さな公園だった。


 足を踏み入れると「にゃあにゃあ」と静かな夜の公園に猫の鳴き声が響いている。

 和樹は目を見張った。

 こちらに背を向けベンチに座る人影を見つけた。その隣にはケージとスーパーの袋が置かれている。


「沙織……?」


 和樹がそっと声を掛けると、人影は驚いたように顔を上げ、そしてゆっくりとこちらに振り返った。


「ご主人様……」


 信じられなかった。

 なぜこんな場所に沙織がクロと一緒にいるのか。家に帰らなかったのか、それとも帰宅後出て来たのか、何があったのかはわからない。

 ただそんな事はどうだって良かった。


 和樹は沙織の元に駆け出した。

 そして抱きしめようとした瞬間、沙織がぽかんとした表情を浮かべ口を開いた。


「ご主人様、どうしたんですか? 散歩ですか?」


「え?」


 やり場を失った手を和樹はどうしていいかわからず、もたつかせながら苦笑いした。


「こんな寒い夜に散歩はしませんよ」


 沙織はいつものように無邪気な笑い声をあげた。その笑顔を目にすると先ほどまで感じていた胸の圧迫がすーっと引いていくのがわかった。


「沙織はここで何してたんですか?」


「私は……なんだろうなぁ」


 寂しげな表情を浮かべた沙織はゆっくりと夜空を見上げた。
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