言い訳~blanc noir~
 沙織がそのワンピースに着替え、フィッティングルームから出てくると思わず和樹は目を見張った。

 痩せているものだとばかり思っていた沙織の体はただ痩せているわけではなく、むしろ、締まっていると言ったほうが正しいだろう。無駄な贅肉は一切なく、女性らしい丸みとシルエットが目に映る。

 そして開いた胸元から豊かな胸の膨らみが谷間を作り、目のやり場に困ってしまった。


「よくお似合いですよ。ちょっとお胸のボリュームがありますので、ストールを巻かれるか大ぶりなネックレスをされたほうがいいかもしれませんね」

 店員に差し出されたネックレスを胸元にあしらう。


「どうですか?」


「あ、似合ってますよ。凄く綺麗です」


 見惚れるほどに目を奪われた和樹が慌ててそう答えると沙織はいつものように無邪気に笑った。

 ワンピースの上から羽織るコートと服装に合うクラッチバッグを購入し、沙織が着ていたジャージを包んでもらう事にした。


「ちょっとご主人様! 待っててください」


 そう言うと沙織は化粧品売り場へ駆け出した。ショップの前に陳列されたテスターを手に取り、突然その場で化粧を始めたのだ。

 真剣な眼差しでマスカラを塗る沙織の姿がとても微笑ましく思える。


「ご主人様、口紅は何色がいいと思いますか?」


 沙織に近付くと顔を向けられた。


「これ、沙織に似合いそう」


 淡いピンク色の口紅を取り出すと沙織が、ふふっと弾むように笑った。


「私もこれがいいかなって思ったんです」


 和樹はその場にいた店員に「これをください」と伝えた。


「ご主人様! 試供品でいいです!」


「この口紅を塗った後、僕にお礼してもらえますか?」
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