あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
敬語とタメ口が混ざりあって驚く東さん。

「二人とも若くていいわね。ため口でいいわよ。ただし、受かっても落ちても恨みっこなしね」

最初は性格のキツそうな人だと思ったけれど、この人も真剣に頑張っていることがわかり、なんだか仲間が増えた気がして嬉しくなった。

「私も、光希歩でいいよ!」

パァっと明るくなった東さんは私と雨宮さんの手を取りしっかりと握る。

「みんなで二次審査合格して歌手になろな!」

ひとつしか変わらないのに、どこか子供っぽいその仕草に私たちは笑いあった。

ここに来てから、怖くて二度と信じたくなかった女友達が初めてできた。
そしてそれは、同じ夢を追う仲間。

私が進み出して得れた、特別な宝物だ。

「では東さん、お入りください」

「はい!」

東さんは可愛らしく手を振って面接会場に入っていく。
始まった。
最後の試験。
頑張ろう。絶対に歌手になろう。

去年の失敗を盾に、私は静かにその時を待った。
< 218 / 240 >

この作品をシェア

pagetop