あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
***
「はい、では最後に岸元さん、お入りください」
「はい」
名前を呼ばれ、「失礼します」といい中に入った。
先程と変わらない審査員の方が私を見つめてくる。
岸元光希歩です。よろしくお願いします。
そう声に出して。
脳から口に司令する。
それを遮るものは…ない。
「岸元光希歩です。よろしくお願いします」
言えなかったあの時の言葉が、しっかりと声に出せた。
「よろしくお願いします。ではおかけ下さい」
「失礼します」
堂々と。自分らしくアピールできたらいい。
なんでも聞いて。
今の私なら、怖いものなんてほとんどないから。
「岸元さんは、どうして芸能界を目指そうと思ったんですか?」
芸能界を目指そうと思った理由。
「私は、不慮の事故でこんな姿になってしまったし、元々芸能界なんて全く興味がありませんでした。でも、ある人の支えで、大好きな歌で今まで私が見てきた過去や教訓を、世界中に伝えたいと思ったから…。だから芸能界を目指したいと思ったんです」
しっかりと一人一人の目を見つめて、私の本心を伝えた。