あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
「そうですか。では、自分の強みはなんですか?」
「強み……あ、作詞ができます!一次審査で歌った曲も、周りの人に支えてもらいながら作りました」
「ああ、たしかにそうでしたね。オリジナルを一応許可はしていますが、その手で来る人は少ないんですよ。でも、なかなかいい歌でしたね」
なかなかいい歌と、褒めてもらえた。
私の思いが、ほんの少しでも伝わったんだ。
「ありがとうございます!」
嬉しいと顔に出ていたのか、面接官の人たちも笑顔になる。
「では、そんな岸元さんに困難なことがあった時、どう乗り越えていきますか?」
困難なことがあった時、どう乗り越えていくか。
私は今まで下を向いてばかりだった。
自分は一人ぼっちだと思い込んで。
人に手を差し伸べられていても、それに気付こうともしなかった。
やっとわかった時も、誰かに支えてもらっていた。
今度は、自分の力で歩き出す。
「私は、下を向くことなく、自分のペースで遠回りをしてでも進み続けて、困難を乗り越えていこうと思います」
なるほどと頷く面接官に、もうひとつ、忘れないように訴えた。
「それでも!それでも、どうしても前に進むことが難しくなったら、たくさんの人に支えてもらいます!そして、また歩み出せたら、今度は私が、その人達を支えにいきます!」
他人に頼ることは悪いことではない。
私は一人ではないのだから。
頼って頼って、そして私も支えるんだ。
「ふふ、そうですね。ではこれから我々を大いに頼ってください。結果は後日郵送します。楽しみに待っていてくださいね。あ、もう帰宅してもらって構いませんよ。本日はありがとうございました」