俺の嫁になれ～一途な御曹司の強すぎる独占愛～

彼の目を見て「はい」と静かに返事をすると、彼女が「よろしくお願いします」と可愛く微笑んだ。
年は二十二くらい。
黒髪ボブに少しつり目の猫顔。
細っそりしていて可愛い。
美樹の情報では、取引先の社長令嬢で、コネで入ったとか。
確かに着てる服やアクセサリーはブランド物だし、定時で仕事を終えると必ずお迎えの車が来る。
だが、彼女はただの社長令嬢ではなかった。
「私、直人さんの婚約者なんです」
大塚さんにエクセルの入力の仕方を教えていたら、そんな衝撃発言が。
数秒頭の中が真っ白になり、何のリアクションも出来なかった。
「……桜井さん？桜井さん？」
大塚さんに何度も声をかけられてハッとするも、「そうなんだ」と言うので精一杯。
ショックだったんだ。
黒崎君に婚約者がいたなんて知らなかった。
私は今まで彼の何を見ていたのだろう。
その日、何とか仕事を終えたが、頭がぼんやりして何も考えられなかった。
胸に大きな穴がぽっかり空いてしまったみたいだ。