俺の嫁になれ～一途な御曹司の強すぎる独占愛～

「酔っ払いじゃありません。素面です。だって、『方丈記』の冒頭の部分だってスラスラ……言えるよ。ゆく川の流れは……ん……絶えずして……ん……」
高校の時に覚えた有名な古文の冒頭を口にするも、その目はトロンとしていて彼女は突然地面にヘタリ込む。
「こら、こんなところで寝るな」
怒って桜井の身体を抱き上げようとしたら、横から後藤の手が伸びてきて彼女を掴んだ。
「俺が送って行くんで、心配はいりませんよ、黒崎さん」
ニコッと俺に向かって笑うが、その笑顔が何とも胡散臭い。
「桜井をわざと酔わせただろ？お前は信用出来ない」
後藤を咎めると、こいつは何食わぬ顔で言い返す。
「へえ、じゃあ自分は信用できると？」
俺を挑発するようなその物言い。
「何が言いたい？」
目を細めて後藤を睨みつけると、こいつも俺を睨み返してきた。
「あの大雪の日、俺見たんですよ。黒崎さんが桜井さんとタクシーに乗り込むところ。次の日、桜井さんは大雪の日と同じ服で出勤してきた。おまけに首筋にキスマークつけて」
「だから？」