大江戸ロミオ&ジュリエット
志鶴はふっくらと微笑んで、肯いた。
もう、辛くはなかった。
今の「南町」の人たちは志鶴を下にも置かぬ扱いだ。夫の多聞は家にいる間、嫁である志鶴を決して離さなかった。
「先達て、『北町』が大捕物を果たされござったこと聞き及んだ由、誠に目出度く存じ奉りまする」
志鶴は嫋やかに一礼した。
「……そして、尚之介さま、ご無事でなによりでござりまする」
祝言の支度で日本橋へ出かけた折に見た、あの歌舞伎役者風の姿こそ、尚之介の御役目であったのだ。
咎人を一網打尽にできたのは、あの折の「後家」に見えた廻船問屋の後妻が口を割ったためであろう。