大江戸ロミオ&ジュリエット
座敷の外から香ばしい匂いがしてきた。
女中の訪いに、多聞が「あいよ」と応えると、すぅーっと襖が開いて鰻がやってきた。
鰻を背から開いて串に刺して、皮目はこんがり身はふっくらと焼き上げた、大蒲焼だ。
「昨日の今日で、おめぇの目方が増えるわけじゃねぇけどよ……せめて、精でもつけさして帰ぇさねぇと、おめぇの実家に顔向けできねぇかんな」
多聞は端整な顔を少し歪めて笑った。
万葉の古より、夏場の鰻は精をつけるのによいとされてきた。
志鶴は箸を取って一口食した。